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Vol.4 "Fragments of Self"

少し大きめの真っ赤なビンテージシャツを身にまとい、耳にはシルバーの大きなピアス、肩からはお気に入りのバンドトートバッグ、これがまゆのスタイル。同じ寮に住む彼女は、東京で西洋史を専攻し、趣味は音楽とイラスト。夜な夜なお互いの部屋を行き来しては、すきなもの・ことをシェアしあっている仲だ。

 

まゆの部屋には、心惹かれるものが散りばめられている。壁には、ビンテージジャケットの周りにセカンドハンドや旅先で手に入れたポストカードがコラージュされている。

​スウェーデン留学前に父親から手渡されたというビンテージジャケットは、まゆにとっての「たいせつなもの 」。元は叔母が彼女と同年代の時に着ていたものだが、家族の中でジャケットが巡り、彼女の元へやってきた。"second hand"ならず"third hand"の服である。

「この服は一生着ると決めた服。色褪せているところとか、袖に穴が空いているところとか好き。着ていると落ち着くし、出かけているときも服が守ってくれていると感じる。

​彼女の服のテイストは父親の影響が強い。実家にいるときは、その日着る服を父のクローゼットから選ぶことが多いという。中学二年生まで父と一緒に高円寺へ古着屋巡りに行き、一枚50円のTシャツを見つけて買っていた。受験を機に少しずつ距離は離れ、高校生の時に父親のことが嫌になったこともあったが、父の服だけは着ていた。父が選ぶ服は、彼女のアイデンティティの一つになっていることが理解できる。

(父親は)モノへの愛着がすごい。例えば、家のグランドピアノが壊れても捨てられなくて、いまでもリビングに物置としておいてあったり。あと、服も捨てられない。Tシャツの9割はバンドTで、好きなバンドはThe Rolling Stones。基本なんだこのひとって思うけど、環境だけじゃなくて人にも優しい父を尊敬している。父への愛が溢れるわ〜。

 

服について考えると、自然と父への思いが溢れる。ギターにニックネームを付けたり、家で友人を呼んでウィスキーを飲みながらレコードを聴く「音楽会」など、人生を愉しむ"ピュア"な父のエピソードも教えてくれた。服だけではない、彼女が聞く音楽も父からインスパイアされている。一つのジャケットを通して、服と音楽を共に楽しむ親子の関係性が見えてくる。

ほかにも、彼女がたいせつにしているものがある。

「これにより私の歴史は決まった。」

そう話しながら見せてくれたのは世界史の教科書"ヤマカワ"。世界史によって、自分に自信を持てるようになったという。中学二年生まで学校の授業に興味が持てず、受験勉強に力が入らなかったが、世界史に出会ってから勉強の楽しさに気づいた。高校に入り、好きな世界史だけは気合いを入れて勉強をした。

「世界史は本当に好きで、テストで満点を取ることも何回かあった。100点が取れたってことは全て理解ができたことになる。そのことがとにかく嬉しかった。逆に問題を間違えたら、100回書き直す執念とか今じゃ考えられないけど。どんな人間でも、頑張ればできるんだと世界史が教えてくれた。」

まゆは現在、都内の大学で西洋史学を学ぶ。歴史に興味を持ったことで視点が外へ向き、入学後はイランやインドへバックパック旅、そしてスウェーデンへ一年間留学につながっている。また、歴史を知ってさらに音楽が好きになった。お気に入りのバンドは、Parliament「Mothership Connection」。アメリカにおける黒人差別や公民権運動の歴史を知ってから、この時代に生まれた曲がより深く理解できるようになったという。

「今たくさん好きなものがあるのは、ヤマカワに出会ったから。」

もう一つたいせつにしているものは、小学一年生の時に作ったオリジナルのカードゲーム。母にペインティングの機能などパソコンの使い方を教えてもらったときに作ったものだ。留学準備をしているときに、押し入れにしまってあったカードや手作りのシールを見つけ、スーツケースの中に入れてスウェーデンにも持ってきた。

 

890と戦闘力が記され、幾何学模様が施されている。このカードをきっかけに、アートクリエイションの楽しさに気づいた。今の目標は、幼少期の何にも染まっていない純粋なアートワークに戻ること。この頃の作品が、イラストやビデオ編集が好きな自分の原点となっていると話してくれた。

「絵と世界史と音楽。この3つを自分から離したら、自分じゃなくなる。それ以外何もいらない。あ、強いていえばチョコ食べたいくらい(笑)」

まゆにとってのたいせつな3つもの は、彼女自身の断片でもあった。

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February 28th, 2019​3

​Interview with Mayu

​Photo and words by Momona O.

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